龍と経営者
私は若い時、よく龍の夢を見ました。
幼いとき遊んだ川に入り、魚を追っていると大きな鯉が出てくる。
鯉を追って川を上って行くと滝壺が現れ、
鯉が突然龍に変わり、私に襲ってきて目が覚める。
おかしな夢だと思っていましたが、
数年前、易経学者竹村亜希子さんの講演会に参加した際、
龍は鯉の化身であることを知りました。
そして『易経』の最初に出てくる龍の物語を聞いた私は
若い頃見ていた龍の夢を通して、
何か一本の線につながったような感覚になりました。
易経にある龍の物語は6つの段階で構成されています。
第一段階 潜龍/志を立てる
第二段階 見龍/師となる人物に見習う
第三段階 乾惕/失敗を反省し、糧とする
第四段階 躍龍/独自性を持って、リーダーとして一歩を踏み出す
第五段階 飛龍/雲を呼び、雨を降らす。リーダーとしての能力を発揮し志を達成する
第六段階 亢龍/高みに昇った龍は役を終える
これを「乾為天の龍」といい、
人間が成長して行くために必要な過程を龍の成長に例えて説明しています。
では、なぜ龍なのか?
天は、恵みの雨を降らせ、大地の万物を生み、育む。
その循環によってこの世の中を創生するとされています。
そして龍もまた、
太古から雲を呼び、恵みの雨を降らせ、
万物を繁栄させる能力があると信じられていました。
龍の絵を思い浮かべてください。
龍の周りにはいつも雲があり、自体を雲で隠しています。
ここで大切なのは龍が恵みの雨を降らせるのではなく、
雲が恵みの雨を降らせているということです。
龍が経営者、雲が社員であれば
経営者と社員が一体となり、社会に恵みを与えるのが会社です。
私自身、世の中から受ける「感謝」という報酬を
社員に分け与えることのできる
魅力ある経営者でありたいと願っています。
そんな私も第六段階 亢龍の時期となってきました。
(上九)亢龍悔あり。象に曰く、亢龍悔ありとは、盈つれば久しからざるなり。
(用九)群龍首なきを見る。吉なり。象に曰く、用九は、天徳首たるべからざるなり。
昇りつめた龍は、いつか降りる時が来ます。
私が学び、経験してきたことを
後世に書き伝えることで、上手な着地を果たしたいと考えています。
0コメント